マリンクロノメーターとユリス・ナルダン『マリーン トルピユール』
皆さま、こんにちは。
今回はユリス・ナルダンの顔ともいえるマリーン トルピユールと、その元になったマリンクロノメーターについて紹介いたします。
■マリンクロノメーターとは
15世紀半ば、ポルトガルとスペイン両国では交易と領土の拡大を求めて、アフリカ・アジア大陸への大航海を始めました。スペインの命を受け1492年にアメリカ新大陸(西インド諸島)を発見したコロンブス、1498年にインドへの新航路を発見したヴァスコ・ダ・ガマや1522年に世界周航をしたマゼランは有名です。
大航海時代が到来したヨーロッパ各国では、海上で船舶の座礁や衝突による海難事故が多発していました。この状況を重く見た英国議会は「経度法」を制定し、海上における経度を正確に測定する方法を生み出した者に賞金の授与を約束しました。これに応じたうちの1人が、当時は無名の時計師ジョン・ハリソンでした。
ハリソンはジョージ・グラハムらのもとを訪れて資金援助を仰ぎ、1728年から7年を費やしてハリソン型初号機『H1』を完成。高さ63cm、幅70cmのこの大型時計は高精度でしたが、平均日差2秒の厳格な基準はクリアできませんでした。
ジョン・ハリソンのマリンクロノメーター『H1』
1939年により小型の『H2』、1957年には『H3』、そして1961年。30年以上の試行錯誤の末に、直径13cmの携帯型『H4』が完成。その後の航海実験では81日間の誤差がわずか5.1秒という驚異的な制度を発揮しました。さらにジェームズ・クックの航海でもその複製品が高精度を証明。ハリソンの名はヨーロッパ中に知れ渡り、英国時計が飛躍する礎を築きました。
H4には、温度変化時に鋼と真鍮のバイメタル部品がヒゲゼンマイの長さを自動調節する画期的な機構を備えていました。
しかし、ハリソンの設計は製作するには技術的に困難が多く、その後の量産には向いていませんでした。
その後フランス人時計師のピエール・ル・ロワがハリソンのバイメタル補正機構にヒントを得て、画期的な脱進機を発明します。
当時最先端機構のル・ロワが開発したマリンクロノメーターの技術を応用して、安価で大量に供給できるように広めたのがイギリス人のジョン・アーノルドとトーマス・アーンショウでした。二人は精度や品質の安定した約1000個のマリンクロノメーターを量産しました。
この製造によって世界の海の覇権争いはイギリスが明らかに有利になっていきました。1860年当時、200隻以上配備していた英国海軍には800個のマリンクロノメーターが保有されていたといわれています。19世紀に大海を自由に航海できるようになったイギリスは7つの海を支配し、産業革命によって世界の工場と呼ばれるようになりますが、これにはマリンクロノメーターの開発と製造が大きな役割を果たしています。
■世界中で使われていたユリスナルダンのマリンクロノメーター
19世紀、ユリス・ナルダンのマリンクロノメーターは50か国の海軍や海運会社に使用され、世界のマリンクロノメーターのほとんどはユリスナルダン製でした。日露戦争で大日本帝国海軍の連合艦隊旗艦を務めた戦艦『三笠』にもユリス・ナルダンのマリンクロノメーターが搭載されていました。
写真の2点はユリスナルダン製で、右は1922年製のマリンクロノメーター、左は1943年製のトルピユールです。『トルピユール』とは19世紀に船長だけが持つことを許されていたユリスナルダンのポケットクロノメーターです。
マリンクロノメーターの製造によって優れた功績を残したユリス・ナルダンは、現在もブランドロゴに錨のマークを用いています。
■マリンクロノメーターのデザインを受け継ぐ『マリーン トルピユール』
ユリス・ナルダンのこの歴史を象徴するコレクションとして、かつて製造していたマリンクロノメーターのデザインを引き継ぐ『マリーン』が展開され、ユリス・ナルダンを象徴する腕時計となっています。
『トルピユール(torpilleur)』はフランス語で”駆逐艦”を意味します。ユリス・ナルダンはこのコレクションを『不屈の船乗りたちに向けた、軽量で現代的なタイムピース』と位置づけています。
■クラシカルな文字盤デザイン
『マリーン トルピユール』は古典的なマリンクロノメーターのデザインを踏襲していて、視認性の高い文字盤になっています。ベゼルが薄く文字盤が広いので、必要な情報をしっかりと確認することができます。
真っ白な文字盤に大きなローマ数字のインデックスを配し、12時位置にパワーリザーブインジケーターを、6時位置にはスモールセコンドとデイト表示があります。スモールセコンドも長く、とても見やすくなっています。
針はすべて繊細なデザインのブルースチールで作られていて、クラシカルで優美な仕上がりです。
■名作キャリバーUN-118搭載
マリーン トルピユールには自社製キャリバーUN-118が搭載されています。
このムーブメントはユリス・ナルダンを代表する実用ムーブメントで、ユリス・ナルダンが開発した『ダイヤモンシル』テクノロジーが使われています。
『ダイヤモンシル』とは、シリシウムの表面にナノレベルで人工ダイヤを結晶させたもので、
これをアンクルとガンギ車に採用しています。ヒゲゼンマイはシリシウム製です。
また、カレンダーの逆戻し機構も備えているので、誤って1日進めすぎてしまった時などにとても便利です。
■マリーン トルピユール 仕様
品番:1183-310/40
ケース素材:ステンレススティール
ケース径:42mm、厚さ11.1mm
防水性:50m
ムーブメント:自社製キャリバーUN-118、COSC認定自動巻き
シリシウム製ヒゲゼンマイ、ダイヤモンシル製ガンギ車&アンクル
毎時28,800振動
パワーリザーブ:約60時間
ストラップ:アリゲーター
価格:¥1,529,000(税込)
■まとめ
いかがでしたか?
ユリス・ナルダンといえばマリーンをイメージする時計好きも多く、そのクラシカルながら特徴的なデザインは根強い人気があります。
その魅力をぜひ、店頭でご確認ください。
8 , November , 2024