リアルミッションタイマー SINN『T50』の実力とは
皆さま、こんにちは。
プロフェッショナルのための時計を追求し続けるジンのコレクションの中には、『ミッションタイマー』と呼ばれるカテゴリーの腕時計があります。
ミッションタイマーは特定の目的のために開発されたプロユースの時計で、優れた視認性とそれぞれの用途に必要な機能性と操作性を持ち、日常とかけ離れた過酷な環境下での使用を想定して素材選びから設計までこだわり抜いて作られています。
今回はそのひとつで、まさに”リアルミッションタイマー”と呼ぶにふさわしい『T50』の実力について、少し掘り下げてみたいと思います。
■T50の素材
ダイバーズウォッチU50のバリエーションとして製作されたT50は、ケース素材にUボートスチールでなくチタンが使用されています。
チタンは1790年に元素として発見され、ギリシャ神話のタイタン(巨人)にちなんで『チタン(チタニウム)』と命名されました。工業製品に使用され始めたのは1940年代で、『軽い』『強い』『錆びにくい』といった特性から1960年代には宇宙開発の分野で注目されるようになりました。
海水への耐食性に優れていることから、ダイバーズウォッチの素材としても最適だといわれています。
■T50が採用しているチタンについて
チタンの発見は18世紀で、金属材料として実用化されたのは1946年といわれています。工業製品としてのチタンは比較的新しい金属で、航空宇宙開発から電気設備、自動車、医療など幅広い分野で使われていて、様々な用途での可能性を秘めている素材です。
チタン一口に言っても合金を含めると様々な種類があります。ジンでは”ピュアチタン(純チタン)”と呼ばれるグレード2と、高強度チタン合金のグレード5のチタンを使用しています。
T50にはグレード5のチタンが使われています。このチタン『Ti-6Al-4v』はアルミニウム6%、バナジウム4%を含む金属で、日本では『64チタン(ロクヨンチタン)』と呼ばれています。
腕時計をデザインする際、ジンではさまざまな要件に配慮しています。グレード5チタンは非常に硬く耐食性が高いため、耐圧ケースをより薄く作ることが可能です。
■チタンの特徴
その① 軽い
チタンの特徴として一番に知られているのはその圧倒的な“軽さ”です。具体的な数値で表すとステンレススチールの比重が7.9であるのに対し、純チタンは4.51、チタン合金は4.8で、ステンレススチールの重量の約60%です。銅と比べると半分程度の軽さで、製品の軽量化による低燃費化が重要な航空分野で需要が拡大しています。
その② 強度が高い
チタンの強度はグレード2で340~510 n/mm2(=MPa)、グレード5で約900 n/mm2(=MPa)で、鉄やアルミに比べ2倍以上の強度を誇ります。ちなみにステンレススチールは700 n/mm2(=MPa)です。メリットである反面、強度が高いがゆえに加工の難易度も高く価格が高めになりますが、それを持って余りある利点があると言えるのがチタンです。
その③錆びにくい
チタンは塩水にとても強い耐性があり、一般的な金属にとって腐食しやすい海水などの過酷な環境下でもサビにくいため、橋の脚などにも使われています。腕時計としてはダイバーズウォッチに最適な素材と言えます。
その④ 金属アレルギーを起こしにくい
金属アレルギーは、汗などの水分と金属が反応して発生するイオンが原因で起こります。チタンは空気に触れると酸化被膜を作り、アレルギーの原因となるイオンの発生がとても少ないため、金属アレルギーが起こりにくいのです。それゆえに、腕時計や眼鏡など肌に直接着けるものや医療用の器具に適しており、これも他の金属と大きく異なるチタンの特性のひとつです。
その⑤ 熱伝導率が低い
寒い季節にチタンの時計を身に着けると、『ひやっ』とする感覚が少ないことに気づきます。これはチタンの熱伝導率が低く熱や電気を通しにくいという性質によるものです。純チタンの熱伝導率は鉄の約1/4、銅の約1/23です。身に着けたときに肌の熱が奪われにくいため時計などは快適な着用が可能で、熱の影響を受けやすいエンジン部品などにも多く使用されているそうです。
ちなみに、表面の硬さを表す“硬度”についてはステンレススチール(316L)が約200HV(ビッカース)であるのに対して、グレード2は約150HV、グレード5で約350HVです。
■T50の機能性
その① 2色に色分けした夜光処理
T50の針は2色に色分けされた夜光塗料によって、暗闇でも時分針をすぐに見分けることができます。
その② セーフティーベゼル
さらに、回転ベゼルは2点を押し下げないと回転できない安全システムを備えているので、誤って回転してしまうこともありません。
その③ テギメント加工されたチタン製ベゼル
チタン製の回転ベゼルにはテギメント加工が施され、極めて傷つきにくくなっています。ベゼルはSUG社により精巧に作られたケースにしっかりとビス留めされていて、使用中に絶対に外れることがないそうです。
その④ ムーブメントを湿気から守る除湿機構
ドライカプセルやアルゴンガスによって時計を湿気から守る『Arドライテクノロジー』を搭載。急激な温度変化での風防の曇りも防止します。
■着け心地と操作性を追求した設計
T50はサイズ感と装着感も徹底的に追及されています。リアルミッションタイマーは決して過度になり過ぎず、見た目も派手でないことが重要です。
直径41mmの軽量なケースは大きすぎず、とても良い装着感です。500メートル防水とは思えないくらい薄く、軽く作られています。
T50の回転ベゼルには分厚いグローブを着けていても操作しやすい大きな溝があり、操作しやすいのも大きな特徴です。
■T50の仕様
【ムーブメント】
・SW300-1(自動巻き、28,800振動)
・耐磁性能:4,800A/m(DIN8309準拠)
【ケース・ストラップ】
・ケースサイズ:直径41mm × 厚さ12.3mm
・重量:53g
・ケース:高強度チタン
・ストラップ:シリコン
・風防:両面無反射サファイアクリスタル
・特殊結合方式と安全システム搭載の逆回転防止ベゼル(テギメント加工)
・裏蓋:高強度チタン、ねじ込み式
・防水性能:50気圧
・減圧耐性
・Arドライテクノロジー
【価格】
¥781,000(税込)
■まとめ
いかがでしたか?
ジンは創業以来『使うためだけの時計』というポリシーのもと、あらゆる過酷な状況下で使用するためのプロフェッショナル向けの時計を製造しています。
無駄を削ぎ落とし、コンパクトなケースに必要な機能を詰め込んだT50の魅力を、ぜひ店頭でご確認ください。
26,April,2024