カルティエはなぜ『宝石商の王』と呼ばれるのか
皆さま、こんにちは。
時計ブランドの中にはジュエラーとしてスタートしたブランドもいくつかあり、それぞれのブランドが他にない独自の魅力を持っています。
今回は、数あるジュエリー&ウォッチブランドの中でも特に深い歴史と物語を持つカルティエについて触れたいと思います。
■王族に愛されたカルティエ
1847年に宝石細工師として工房を始めたルイ=フランソワ・カルティエ。
その卓越した技術とセンスで、創業間もなくカルティエはパリの社交界で有名な存在になりました。
1853年にパリにブティックをオープンし、そのわずか6年後にはフランス皇帝ナポレオン3世の皇后ウジェニーを顧客にし、上流階級の女性たちを虜にしていきました。
1899年にはブティックを現在のラ・ペ通りに移転。その宝石に対する優れた審美眼と革新的なデザインセンスは一流を知り尽くした世界の王族の支持を集めていきます。
1902年にロンドンに進出し、その2年後には英国王エドワード7世とスペイン王アルフォンス13世の御用達となります。
ラ・ペ通りに移転した当時のカルティエ本店
カルティエを語る時に用いられる『王の宝石商、宝石商の王』というキーワードは、エドワード7世がカルティエを称えた言葉です。
3代目であり孫のルイ・カルティエの代には世界的ジュエラーとして名を馳せ、15か国から王室御用達を受けます。
現在もラ・ペ本店の入り口の左右には英国王室御用達の証であるロイヤルワラントをはじめ、9つの王室の紋章が掲げられています。
現在のラ・ペ本店
■世界初のプラチナジュエリーとガーランド・スタイル
1803年、英国の化学者ウィリアム・H・ウラストンがプラチナの精錬・加工技術を発見したことにより、産業界でプラチナが利用されるようになりました。
また、1900年頃前後のベル・エポック期、装飾様式では花や植物など有機的な曲線を用いる『アール・ヌーヴォー』が全盛期を迎えていました。
宝石商ルイ・カルティエはプラチナの秘められた可能性を見抜き、その特性を引き出すため、ルイ16世時代の装飾美術のスタイルをジュエリーに復活させました。
のちに『ガーランド・スタイル』を呼ばれる、花や植物をモチーフにしたその装飾スタイルを小さなジュエリーで実現するためには精緻な細工を可能とする素材が不可欠で、非常にしなやかな特性を持つプラチナだけがカルティエの意に叶う素材でした。
精錬も加工も、金よりはるかに高度な技術を必要とするプラチナ。他のジュエラーの多くがプラチナを手がけるようになるのは、それから30年近く後でした。
プラチナとカルティエとガーランド・スタイルは、素材と技術とデザインが高い水準で融合した特別なジュエリーとなりました。
■メゾンを発展させた女性デザイナー、ジャンヌ・トゥーサン
英国王室の中でも特にカルティエと縁の深かった人物に、ウインザー公とシンプソン夫人がいます。
洒落者として知られたウインザー公はカルティエのジュエリーをいくつも夫人に贈り、夫人はジュエリーを贈られるたびにそのジュエリーが引き立つドレスを新調してパーティーに登場して注目を集めたそうです。
ウインザー公とシンプソン夫人
シンプソン夫人はカルティエを代表するアイコンとなっている『パンテール(豹)』のジュエリーをこよなく愛しました。
当時カルティエのジュエリー部門の最高責任者を務めていたジャンヌ・トゥーサンが発展させたパンテールは、時にリアルに、時に豹柄を大胆に描き出して、さまざまなジュエリーやウォッチとして展開しています。
ジャンヌ・トゥーサンはパリで初めて毛皮のコートを纏った女性のひとりといわれ、そのことから彼女自身も『ラ・パンテール』と呼ばれたそうです。
数々の傑作を生み出したジュエリーデザイナー、ジャンヌ・トゥーサン
3代目ルイ・カルティエはジャンヌのユニークな感性に魅了され、1920年代からメゾンに参加させ、1933年にはジュエリー部門の最高責任者に抜擢しました。
女性が働くということすら珍しかった当時、このような重要な役職につくことは異例中の異例でした。
それほどジャンヌの才能は突出していたのです。
■今回の時計『パンテール ドゥ カルティエ』
1983年に発表されたパンテール・ウォッチは、瞬く間に人気の的となりました。
この名前はブレスレットに由来します。この上なくしなやかなブレスレットはパンテール(豹)の優雅な動きを想起させます。ポリッシュ仕上げのふくらみのあるリンクの連なりは、豹の模様のようであり、手首の上を流れるような動きに繋がります。
2022年に発売されたこのプレシャスバージョンは、これまでのカルティエの特徴であるローマ数字を排したニュアンスカラーの文字盤が特徴です。
対角線で光が交差し、その流れを反転させて虹色に輝くグラデーションの生まれる文字盤のデザインは、これまでのカルティエになかったコンテンポラリーな魅力があります。
パンテール ドゥ カルティエ
品番:CRWSPN0010
ケースサイズ:22mm×30mm
ケース素材:ステンレススティール
ムーブメント:クォーツムーブメント
リューズにブルーシンセティック スピネル
価格:638,000円(税込)
■まとめ
いかがでしたか?
王の宝石商であり宝石商の王と呼ばれたカルティエは、創業当初から類まれなセンスと卓越した技術でジュエリー業界を牽引してきました。
多くの国の王族を顧客にしてきたその素晴らしいジュエリーや時計は、現在も世界中の人々を魅了し続けています。
その輝かしい歴史に彩られたカルティエの名作ウォッチを、ぜひ店頭でご確認ください。