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なぜIWCには独自の存在感があるのか。その歩みを紐解く。

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皆さま、こんにちは。

数あるスイスの時計ブランドの中でも独自の存在感をもつIWC。

今回は、なぜIWCはスイスブランドでありながら他のスイス時計ブランドと少し違った存在感をもつのか。

そんなIWCの生い立ちとIWCが生まれ育った町シャフハウゼンについて、歴史と地理の両面から触れてみたいと思います。

■アメリカ人創業者フロレンタイン・アリオスト・ジョーンズ

1860年代、スイスでは熟練した時計職人の手により芸術性の高い懐中時計が製作されていましたが、全てが手作業で作られていたため品質にばらつきがあり、生産効率も良くありませんでした。

その頃アメリカでは南北戦争が終わり、第二次産業革命に向かって大陸横断鉄道が敷かれるなどアメリカ全土に鉄道が急速に発展し、それに伴って懐中時計の需要が以前に増して高くなっていました。

そんな中、アメリカ最古の時計ブランド『ウォルサム』創設者アーロン・ルフキン・デニソンが工業化によって懐中時計の量産化に成功します。

のちにIWCを創業するアメリカ・ボストン出身のフロレンタイン・アリオスト・ジョーンズは、27歳の若さでウォルサムの共同設立者のエドワード・ハワードが設立した時計メーカー『E.ハワード ウォッチ&クロックカンパニー』の副社長になります。

当時のE.ハワード ウォッチ&クロックカンパニー

ハワード製の懐中時計

その後F.A.ジョーンズは、『スイスの伝統的で高品質な職人技術』と『アメリカの合理的で均質な製造システム』を組み合わせて、質の高い時計を大量に生産してアメリカに輸出したいと考え、スイスに渡ります。

こうしてスイスに渡ったF.A.ジョーンズでしたが、ここで大きな壁にぶつかってしまいます。

時計産業の中心地ジュネーブでは当時は保守的な考え方が主流で、外国から来た青年の話は受け入れられず、ジュネーブで時計会社を設立することが出来なかったのです。

 

■H.モーザーとの出会い

ジュネーブでの時計製造を断念せざるを得なくなったF.A.ジョーンズは、その後実業家ヨハン・ハインリッヒ・モーザーとの出会いで運命の糸を引き寄せます。

ジュネーブから遠く離れたドイツ国境に隣接する町シャフハウゼン出身のモーザーは、優れた時計師であると同時にパイオニア精神に溢れる実業家でした。

モーザーはシャフハウゼンの象徴でもあるライン川の豊富な水を利用した水力発電所を建設した革新的な人物で、F.A.ジョーンズは彼との出会いによって幸運にも水力発電を備えた工場を借り受けるチャンスを得ます。

ヨハン・ハインリッヒ・モーザーは1805年にシャフハウゼンで時計師の一家に生まれ、1828年にロシア・サンクトペテルブルグで時計ブランド『H.モーザー』を創業。H.モーザーの時計はロシア皇帝に愛され、アメリカやアジアにも販路を広げました。

その後1848年に故郷のシャフハウゼンに戻り、町の発展に取り組みます。

モーザーは1865年にスイス最大のダムを建設し、水力発電所を建設しました。

 

■International Watch Companyの誕生

晴れてモーザーから工場を借りることができたF.A.ジョーンズは、1868年にシャフハウゼンに『インターナショナル・ウォッチ・カンパニー』を設立します。

当時のIWC社屋と工房での最終検品の様子。生産規模の大きさが伺えます。

“International Watch Company”という、スイスの時計ブランドとしては珍しい英語の社名なのは、創業者のF.A.ジョーンズがアメリカ人で、アメリカへの輸出を念頭に置いて創業したからに違いありません。

その時代にそこまで考えていたのは、かなりの先見の明と情熱があったからだと思います。

そして1870年頃、名作ムーブメント『ジョーンズ・キャリバー』が完成しました。

脱進機に付いている長い緩急針が特徴で、この緩急針によって精密な歩度調整が行えます。

この緩急進は後に『F.A.ジョーンズ・アロー』と名づけられました。

IWCミュージアムに所蔵されているジョーンズ・キャリバー搭載の懐中時計。

テンプの軸受けから伸びる長い緩急針が特徴で、ドイツ時計によく見られる3/4プレートを採用しています。3/4プレートは地板から組み上げられる歯車などの輪列をよりしっかりと押さえられ、衝撃や振動に強い特徴を持っています。

プレート下部に刻印されている“H”の文字は、当時のIWCのキャリバーパターンの中で最も高品質な『パターンH』のキャリバーであることを意味しています。

 

ドイツ国境に隣接する、古都シャフハウゼン

IWC誕生の歴史の次は、地理の面から少し掘り下げてシャフハウゼンの魅力に触れてみたいと思います。

ジュネーブから遠く離れたシャフハウゼンは、ドイツとの国境に位置しています。

地図の一番左、スイスの西の端でフランスに突き出している町がジュネーブ、一番上のスイスの北の端にある町がシャフハウゼンです。

言語もジュネーブがフランス語なのに対しシャフハウゼンはドイツ語で、文化もフランス語圏と違いがあります。

シャフハウゼンは中世の面影を強く残す町で、その街並みはドイツ色が濃くなっています。

1942年に建てられた『騎士の家』は、壁一面に描かれたフレスコ画と出窓が中世ヨーロッパの雰囲気を感じさせます。

シャフハウゼンの町にはモーザー公園があり、公園のそばにはモーザー通りが走っています。

公園内にはモーザーの像があり、彼がシャフハウゼンの町にとっていかに重要な人物かが伺えます。

帰郷後にモーザーが家族と住んでいた邸宅。ラインの滝に近い高台にあり、現在はミュージアムになっています。

 

■ヨーロッパ最大の『ラインの滝』

シャフハウゼンの見どころのひとつに『ラインの滝』があります。

スイスアルプスを源に、ドイツを経て北海に流れるライン川。

シャフハウゼン郊外にあるラインの滝は、全長1,320kmのライン川において唯一の滝でヨーロッパ最大の水量を誇り、詩人ゲーテも称えた景勝地として有名です。

幅150m、落差23mのラインの滝は、高さこそありませんが、轟音と激しい水しぶきとともに流れる様が圧巻です。

ラインの滝の目の前にあるレストラン『Schloessli Woerth』。川に突き出るように建っています。

このレストランでは迫力のある滝を眺めながら、ライン川で獲れた鱒の料理を食べることができます。

このようにシャフハウゼンは豊かな自然に囲まれた古都で、その静かな環境は精密時計づくりにとって理想的といえます。

 

■今回の時計『ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー42』

IWCが得意とする複雑機構のひとつがパーペチュアルカレンダーです。

1980年代にクルト・クラウスが開発したIWCの永久カレンダーは、リューズひとつで全てのカレンダーを合わせることが出来る画期的な機構です。

ペラトン自動巻き機構を備えたキャリバー82000シリーズに永久カレンダーを組み込み、これまでのパーペチュアルカレンダーよりコンパクトな42mmケースに、60時間パワーリザーブを備えた実用的な仕様で誕生しました。

時代に左右されないエレガントなこのポルトギーゼにはサントーニ社製のブラック・アリゲーターストラップが装着され、上質で知的な雰囲気を演出しています。

ポルトギーゼ・パーペチュアルカレンダー42

品番:IW344203

ケース:ステンレススティール製、直径42.4mm、厚さ13.8mm、シースルーバック、3気圧防水

ムーブメント:IWC自社製 82650キャリバー、自動巻き、60時間パワーリザーブ、28,800振動

特徴:ペラトン自動巻き機構、日、曜日、月、閏年、永久ムーンフェイズを表示する永久カレンダー

価格:¥3,558,500(税込)

 

■まとめ

IWCの理念である『PROBUS SCAFUSIA(プローブス・スカフージア』 は、ラテン語で『シャフハウゼンの優秀な、そして徹底したクラフトマンシップ』を意味します。

創業から155年間大切に守り続けられてきた製造哲学であるこの言葉は、IWCの時計の自動巻きローターやリューズに刻まれています。

“質実剛健”と表現されるIWCの時計づくりの背景には、創業者フロレンタイン・アリオスト・ジョーンズの開拓者精神とアイデア、そしてそれを実現させる力強い行動力があります。

IWCの時計にドイツ時計のような雰囲気や特徴があるのも、地理的な要素のほかに“良いものを長く使う”というドイツのモノづくりの考え方と共通した気質があるからなのかもしれません。

いつの時代も力強く続くライン川の流れのように、創業からずっと変わらず続くIWCの哲学とクラフトマンシップを、ぜひ店頭で感じてみてください。

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