カルティエの名作『サントス』の歴史に迫る
皆さま、こんにちは。
今回はカルティエの腕時計についての話題です。
カルティエの名作ウォッチといえば、皆さんはどのモデルを思い浮かべるでしょう。
サントス、タンク、パシャ. . .。
カルティエには数々の名作がありますが、今日はその中でもとりわけ長い歴史と深い物語のある『サントス』についてお話ししたいと思います。
– サントス誕生秘話 –
■アルベルト・サントス=デュモンとルイ・カルティエ
20世紀初頭、パリが最も華やかだったベル・エポックの時代。パリの社交界で羨望の的となっていた一人の紳士がいました。
その男の名前は『アルベルト・サントス=デュモン』。
彼はブラジルの富豪であるコーヒー王アンリクの息子で飛行家でした。
当時、ライト兄弟の初飛行や自身の活躍などによって巻き起こっていた世界的な飛行ブームの中、アルベルト・サントス=デュモンは、1901年に飛行船でエッフェル塔の周りを1周するなど、数々の飛行記録を打ち立てていました。彼は大胆に空を舞う冒険家であり、時代を切り開く先駆者でもありました。
空を舞台に果敢な挑戦を繰り広げるサントス=デュモンは、ギュスターブ・エッフェルやジュール・ヴェルヌをはじめとする産業・芸術・科学の世界のエリートたちとの豊かな人脈を持つ社交家でもありました。
アルベルト・サントス=デュモンは洒落者としても有名でした。
サントスはいつも襟の高い白シャツにハットをかぶり、パリの社交界でもひときわ目立つ存在でした。紳士たちはハイセンスな彼のファッションをこぞって真似るなど、サントスはまさにファッションリーダーのような存在でした。
アルベルト・サントス=デュモンの初飛行の記事
一方、ルイ・カルティエは当時、王族や貴族からの注文が殺到し『宝石商の王』と呼ばれたカルティエの3代目当主でした。
ルイ・カルティエ
ルイ・カルティエとサントス=デュモンはともにパリ社交界の有名人であり、友人でした。
ある日、サントスはルイ・カルティエに、飛行機を操縦する時にポケットから懐中時計を取り出して時刻を確認するのは困難だと相談します。
ルイ・カルティエはさっそく彼のために腕時計のデザインに取り掛かりました。
そして、3年後の1904年に完成した腕時計が『サントス・デュモン』です。
■腕時計の時代のはじまり
腕時計は初め、女性のためのアクセサリーとして誕生しました。
19世紀初頭には婦人用の腕時計が登場し、チェーンやストラップの付いた装飾的な腕時計が上流階級の女性たちの間で身に着けられるようになりました。1806年に皇帝ナポレオンが皇妃ジョセフィーヌのためにパリの時計宝飾師ニトーに作らせた腕時計がはじまりだといわれています。
当時男性は、ポケットから取り出して見る懐中時計を使っていました。
懐中時計と比べて小型な腕時計は精度も悪く、当時の“男は女のように腕に時計を巻くものではない”といった先入観も婦人用腕時計に遅れをとっていた原因でした。
当時の紳士の写真を見ると、必ず懐中時計のチェーンが写るように撮影されています。気軽に写真を撮ることが出来なかった時代、とびきりのお洒落をして撮影した記念写真を見ても、いかに懐中時計がステイタスの高いアイテムだったか想像できます。
男性向きの腕時計が登場したのは19世紀の終わりごろ、戦争がきっかけでした。
1880年頃、ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世がジラール・ペルゴにドイツ海軍将校用の腕時計2000個を製作させたという記録があります。当時の腕時計は、懐中時計を腕に巻くための革バンドが付いたもので、現代の腕時計とはかなり違ったものでした。
ジラール・ペルゴ製の1880年当時のミリタリーウォッチ
■ルイ・カルティエがサントスに贈った腕時計
懐中時計をポケットから取り出して見るのがその時代の紳士のスタイルであった時代に、ルイ・カルティエはサントスを満足させるために紳士が身に着けるにふさわしいエレガントな腕時計をデザインし、サントスの手に贈りました。
この腕時計は『サントス・デュモン』と名づけられ、サントスが飛行する時はいつも彼の腕にありました。
彼に贈られたサントスのオリジナルは、すでに現行モデルに近い完成度の高いもので、懐中時計に革バンドを取り付けた当時の時計とは全く違うものでした。
そのため、世界初の腕時計はカルティエのサントスだといわれているのです。
これをきっかけに、男性の時計も懐中時計から腕時計へと大きく移行していきます。
1920年代のサントス・デュモン
ちなみに、『サントス』が初めて一般に販売されたのは1911年。1913年のカルティエの台帳にも、サントス・デュモンという正方形の時計をキンスキー伯爵に販売したとの記録が残っています。
当初から高い完成度を誇っていたサントスは、角に丸みをもたせた正方形のケースとベゼルにデザインされた8個のビスが特徴で、ローマ数字のインデックスやレイルウェイ分目盛り、ブルースチールの針はカルティエの伝統的なデザインの原点になっています。
■進化を続けたサントスウォッチ
時が過ぎ1970年代になると、オーデマ・ピゲのロイヤルオークやパテックフィリップのノーチラスの成功をきっかけに、ステンレススティール製のラグジュアリースポーツウォッチの潮流が生まれます。
1978年に、サントスはステンレス製のケースにリューズガードを加え、今までより大きなビスを用いたスポーティーなデザインにアップデートされます。
サントスガルベ(1987年~)
■サントス誕生100周年
2004年にはサントス誕生100周年を記念して、『サントス100』が発売されました。
より厚みのあるケースに、ベゼルやビスも大きくなってパワフルなデザインになっています。
サントス100
– 最新のサントスシリーズ –
「最新こそ最良」という言葉どおり、現行のサントスシリーズはこれまでの伝統に磨きがかかり、どれも魅力的な作品に仕上がっています。
■サントス・デュモン
1904年に誕生した初代サントス・デュモンのオリジナルデザインに忠実に、リューズガードを排し、カボションスピネルのリューズに戻してクラシカルなデザインに回帰しています。
薄型ケースに山型に傾斜したベゼルで高さの変化をつけ、薄さと立体感を両立しています。
XLサイズには薄型ムーブメントの傑作、Cal.430MC手巻きムーブメントを、LMとSMサイズには新開発のバッテリー寿命6年の長寿命クオーツムーブメントを搭載しています。
【サントス・デュモン LM】
品番:WSSA0022
ムーブメント:長寿命クオーツムーブメント
ケース:ステンレススティール
ケース幅: 31.4mm
ストラップ:ネイビーブルー アリゲーターストラップ
防水:日常生活防水
価格:¥566,500(税込)
■サントス・ドゥ・カルティエ
2018年にリニューアルしたサントス・ドゥ・カルティエは、それまでのサントス100よりぐっと薄型になり、サントスガルベに近いスマートなデザインになっています。そしてベゼルのデザインがブレスレットにつながるデザインに刷新されました。
Cal.1847 MC自動巻きムーブメントを搭載し、歯車でなく「爪」で巻き上げるマジッククリックによって自動巻きの巻き上げ効率が格段に良くなっています。そして、簡単にストラップを交換できる「クイックスイッチ」と、ブレスレットの駒調整が簡単に行える「スマートリンク」システムを搭載しています。
【サントス・ドゥ・カルティエ LM】
品番:WSSA0018
ムーブメント:キャリバー1847MC 自動巻きメカニカル マニュファクチュール
ケース:ステンレススティール製
ケース幅:39.8mm
ストラップ:ステンレスブレスレット、カーフストラップ
防水:10気圧
価格:¥998,000(税込)
■サントス・ドゥ・カルティエ・スケルトン
サントス・ドゥ・カルティエのスケルトン仕様。ムーブメントだけでなくケースの向こうまで見通せます。
ムーブメントは手巻き9612MCで、最低限必要な部品以外を削ぎ落し、驚くほどコンパクト。ケース内部の空間が広くとられ、ムーブメントが宙に浮いているような雰囲気です。
この時計に文字盤はありませんが、ムーブメントを支えるブリッジがカルティエのアイコンであるローマ数字になっていて、まるで透明な文字盤があるようにも思え、“カルティエらしさ”を全面に感じることができます。
これによって他のスケルトンウォッチにない、均整の取れた美しさを実現しています。
夜間には大きなインデックスがくっきりと発光し、昼間とは違った表情を見せてくれます。
【サントス・ドゥ・カルティエ スケルトン】
品番:WHSA0009
ムーブメント:キャリバー9612MC 手巻きメカニカル マニュファクチュール
ケース:ブラックADLC加工スティール製
ケース幅:39.7mm
ストラップ:ブラックアリゲーター、ダークグレーアリゲーターストラップ
防水:10気圧
価格:¥4,078,800(税込)
■まとめ
いかがでしたか?サントスウォッチの魅力が伝わりましたでしょうか。
大空への挑戦を続けたアルベルト・サントス=デュモンと腕時計の時代を築いたルイ・カルティエのパイオニア精神を継承し、現在も進化を続けるサントスウォッチ。
そのデザインは誕生から100年以上経っても色褪せることなく特別な存在感を放っていて、二人の友情をも現代に語り継いでいます。
そのサントスシリーズの魅力を、ぜひ店頭でご確認ください。